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大震災の影響で台頭した住宅ローン金利の上昇懸念 今後の先行きを占う
 イギリスが今年1月4日、日本の消費税にあたる付加価値税を2.5%引き上げたのをご存じだっただろうか。同国では通貨ユーロを導入していないため、ギリシャやスペインのように「通貨政策」に縛られることはなかったが、世界的な金融危機の影響は免れず、これまでGDP(国内総生産)比1ケタ台だった財政赤字は2009年以降、2ケタ台へと悪化していった。そこで、GDPの10%強に当たる約20兆円もの巨額の財政赤字を削減すべく、年明け早々、聖域(増税)に踏み込んだ。これにより、今ではノルウェーの25.0%、フィンランドやギリシャの23.0%に次ぎ、オーストリアやイタリアと並び20.0%の消費税率が英国民に課されている。食料品や水道代、書籍、医薬品など、様々な非課税制度や軽減措置が取られてはいるものの、イギリスは完全な高税率国へと仲間入りすることとなった。



 財政悪化という意味では日本も例外ではない。わが国は経常収支こそ黒字(債権国)だが、2010年12月末現在、国債に借入金・政府短期証券を合わせた政府の債務残高は919兆円に達している。ご存じのように、世界ワーストワンの借金大国だ。そのため、イギリス同様、早急な財政再建が求められるわけだが、東日本大震災の発生によって、当面、その実現は困難となった。政府の試算によると、今回の地震による直接的な被害額は16兆〜25兆円にのぼる。およそ10兆円だった阪神淡路大震災の最大2.5倍の金額だ。阪神淡路では16兆円の復興資金が費やされたが、仮に2.5倍で単純計算すると、東日本大震災では40兆円(16兆円×2.5)の復興費用が必要になる。この中に原発事故や計画停電による二次被害の金額(間接被害額)は含まれていない。



 今後、どうやって復興財源を捻出するのか?―― 基礎年金の国費負担分(現行2分の1)を維持するための財源から流用する案や、期限や目的を限定した震災復興税を創設する案などが提案されている。そのプラスとマイナスの効果を検証しながら、これから詰めの作業が進められていくことだろう。日本経済新聞社とテレビ東京が4月中旬に共同実施した世論調査によると、復旧・復興策の財源について「増税を容認する」という意見が69%に達したことが分かった。より具体的には、(1)震災復興を目的とする増税が必要、(2)国債の増発が必要、(3)増税と国債増発の両方が必要 ――という3肢から1つ答えてもらったところ、「増税」が38%、「国債の増発」が13%、「両方」が31%となった。“増税やむなし”との民意が少しずつ形成されつつあるようだ。



 とはいえ増税には根強い反対もあり、仮に歳出削減や臨時増税で復興資金が工面できたとしても、日本の財政状況が必ずしも改善されることとは直結しない。阪神淡路大震災当時、トリブルA(AAA)だった日本国債の格付けは、今日ではダブルAマイナス(AA−)へと格下げされてしまっている。震災復興のための財源確保と財政健全化の両立をどうやって成し遂げるか、その成否によって国債の需給関係は変動することになる。昨年5月、財政悪化の表面化でギリシャの長期金利が一時、急騰したのは周知の事実だ。長期金利と住宅ローン金利には密接な関係があるだけに、これから住宅ローンを組もうという人にとって、わが国の財政の先行きがどうなるかは気になるところだろう。大震災の影響で住宅ローン金利が急上昇するのではないかとの懸念がささやかれる中、筆者なりの金利見通しをお伝えすることにする。



■「金利上昇リスクは避けたい。しかし、低金利の恩恵は享受したい」というジレンマ



 今後、日本の住宅ローン金利は本格的な上昇トレンドに突入するのかどうか、その答えを見つける手がかりとして、まずは住宅金融支援機構が定期的に公表している「民間住宅ローン利用者の実態調査」を見てみることにしよう。今年3月30日に発表された平成22年度第3回の調査によると、今後1年間の住宅ローン金利の動向について、一般の住宅ローン利用者は次のような見通しを示している。




<今後1年間の住宅ローン金利見通しについて> ・現状よりも上昇する………………………………………… 24.7%
・少し上昇するが、気にするほどではない………………… 26.5%
・短期金利は上昇しても、長期金利はさほど上昇しない … 3.4%
・ほとんど変わらない………………………………………… 33.7%
・変動はあるが、そのうち低下する ………………………… 3.4%
・見当がつかない …………………………………………… 8.3%




 この結果からは54.6%の人が何かしら住宅ローン金利は上昇すると考えていることが分かった。ほとんど変わらないという人は全体の3分の1(33.7%)にとどまっている。そのうち低下すると見通している人はわずか3.4%だ。



確かに諸外国を見てみると、ECB(欧州中央銀行)が4月7日、およそ3年ぶりに政策金利を引き上げた。経済成長著しい中国は昨年10月以降、ほぼ2カ月に1回のペースで追加利上げを繰り返している。9.7%(今年1〜3月期)という高い成長率に伴うインフレ圧力を抑制する狙いだ。また、米国では現在の量的緩和政策を今年6月に打ち切ることが視野に入ってきた。隣国の韓国は昨夏からすでに4回、政策金利を引き上げ済みだ。2008年9月のリーマンショックから2年半が過ぎ、政策スタンスは世界的に金利正常化(=利上げ)の方向へと動き始めている。



 ところが、話を元に戻して今度は金利タイプ別利用状況の調査結果を見てみると、相変わらず変動タイプを選ぶ人の割合がほぼ半数を占めている(下表参照)。金利上昇を予測するのであれば、本来、固定タイプの比重を高めるのがセオリー(正攻法)だ。にもかかわらず、構成比に大きな変化は見られない。どうやら「金利上昇リスクは避けたいが、低金利の恩恵は享受したい」という深層心理が根底にあるようだ。「ジレンマ」というより「わがまま」と表現したほうが適切なのかもしれない。こうした利用者意識が変動金利人気を下支えする。




住宅ローン金利のタイプ別利用状況の構成比の推移(単位:%)   平成21年度 平成22年度
第1回 第2回 第3回 第1回 第2回 第3回
変 動 型 42.9 50.5 51.8 45.6 47.3 45.8
固定期間選択型 35.0 30.7 32.7 32.8 28.9 29.6
全期間固定型 22.1 18.8 15.5 21.6 23.8 24.6

(出所)住宅金融支援機構「民間住宅ローン利用者の実態調査」




■事実上のゼロ金利政策が継続する限り、住宅ローン金利が上昇する余地は限られる



 では、本当に日本の住宅ローン金利はいずれ上昇していくのだろうか?


投資先候補となる中国企業5社
 【ボストン】昔はE.F.ハットン、今はピムコ。

 ビル・グロス氏でもモハメド・エラリアン氏でも、ピムコ(パシフィック・インベストメント・マネジメント)の助言であれば、誰彼構わず投資家はその一語一句に従っているようである。ピムコが口を開けば、資金が流れ、市場が動く。

Associated Press 上海の証券会社で株価ボードを見る個人投資家

 新設ファンドのPIMCO・EqS・エマージング・マーケッツを運用するマリア・ゴードン氏は先日、「人民元を有望視」しており、中国株を「大幅にオーバーウェイト」していると発言した。これが、多くの投資家が中国での投資戦略を練り始めるきっかけになったのもその良い例だろう。ピムコが有望視するなら魅力的に違いない、というところだ。

 ゴードン氏同様、アジアン・エクイティ・リサーチ・インスティテュート(AERI)のディレクター、フィリップ・アベンハウス氏も中国に強気である。ミズーリ大学を拠点とするAERIは中国企業業況指数を作成しており、アベンハウス氏はその強気見通しを裏付ける要因はたくさんあると言う。中国経済は1978年以来、年平均9.7%の勢いで成長しており、今では世界第2位の経済大国となった。また、13億人の人口は急速に消費力を増しており、政治情勢も安定感を増している。

 今月上場する中国本土以外で初の人民元建て不動産投資信託(REIT)も期待できるとアベンハウス氏は語る。

 しかし、中国の個々の企業への投資にはリスクもたくさんある。

 中国A株市場の動向、経済の状況、重要な政策変更に関する情報は手に入りにくいため、一般の投資家にとって、中国、特に同国の中小企業や零細企業の価値を見極めるのは難しい(2010年時点で、中国国民のみが取引を認められているA株を発行している企業は531社以上、米国証券取引所に上場している中国企業は約250社ある)。

 その他にも、休眠上場会社を買収することによって厳格な情報公開をせずに上場する裏上場の問題や、今も新興市場としてみられていること、インフレ見通し、空売りの増加など、リスクは尽きないとアベンハウス氏は言う。

 しかし、「多くの一般投資家にとっては、大企業であれば大企業であるほど良い」と話す同氏は、これらのリスクを考慮しても投資先候補となり得る中国企業として以下の5社を挙げた。

 まず、中国人寿保険。同社は、中国平安保険、中国太平洋保険とともに同国を代表する保険会社であるが、その中でも77万の専属代理店を有する中国人寿は、生命保険と年金で最大手であり、団体生命保険と団体年金にも強い。

 ただし、マーケットシェアは大きいが、リスクがないわけではない。中国人寿でも金利リスクは避けられず、同社資産の半分以上が債券で占められているということもある。アベンハウス氏は最近のレポートで、「経済情勢、倒産動向、低流動性、そして債券投資に関わる他の基本的なリスクが、中国人寿保険の財務を悪化する可能性がある」と警告している(長期的な支払能力を示すソルベンシー・マージン比率は2009年の300%から2010年末に219%に低下したが、同社は先月、増資予定はないと述べている)。

 中国の保険会社は規制に則って資金を運用しているため、投資先およびリターンが限られ、リスク分散をしにくいという難点もある。また、国内外の競合他社との競争激化でマーケットシェアが低下する恐れがあり、大災害の影響を受ける可能性もある。中国人寿は大災害の再保険を掛けていないため、もし損害が起きた場合にはその影響を全て受けることになる。さらに、中国の審計署が今年、保険大手の中国人民保険と中国人寿の2009年度の監査で、合計約4.58億ドル(375億円)の規律違反資金を発見したという問題もある。

 次に投資先候補として、世界最大の契約者数を有する中国移動通信がある。ただし、中国で70%のマーケットシェアを誇る同社に投資をするにもリスクはある、とアベンハウス氏は言う。まず、現在の成長率を今後も持続できるとは限らず、競争も激化している。そして、中国移動の将来は、技術革新に同社がついていけるかに掛かっている。アベンハウス氏はレポートで、「特に、同社のTD-SCDMA方式を採用した3Gネットワークは、あまり普及しないか次世代通信規格に取って代わられる可能性がある」と述べている。また、費用削減が進まなければ、規制強化に対応するための費用増が利益を圧迫する可能性もあり、割り当てられた周波数のみでは今後の成長に限界がある。

 中国石油化工(シノペック)は同国の石油化学最大手で、高度経済成長による恩恵を長期的に受けられるであろう企業である。しかし、中国人寿、中国移動と同様に、考慮すべきリスクは多い。アベンハウス氏によれば、シノペックは石油製品の生産に必要な原油などの原料を外部供給に頼っている。また、国内、海外ともに競合企業が多く存在し、同国の石油産業は環境保護などに関する規制が多く、その上頻繁に変更されるので、事業環境は厳しい。それが、将来的な費用増と利益率の低下につながる可能性があると同氏は言う。

 石油・天然ガス第3位の中国海洋石油(CNOOC)も、時価総額1,100億ドルの大企業である。インドネシア、ナイジェリア、オーストラリアでも事業展開している。ただし、現在の株価は52週高値に近いので、割安とは言えないかもしれない。また、他社同様リスクもある。大部分の原油をシノペックと中国石油天然気(ペトロチャイナ)に販売しているが、長期契約がないため、この2社との取引が減少すれば大打撃を受ける。そして前述のように、石油ガス産業は競争が激しく、規制が厳しい。さらに、自然災害などで石油開発や掘削に影響が出る可能性もある。

 最後になったが、石油・天然ガス最大手のペトロチャイナも忘れてはならない。ザックス・インベストメント・リサーチは今週、ペトロチャイナの投資判断を「中立」から「アウトパフォーム」に引き上げ、その理由として急速に拡大する中国市場における同社の優位性とコモディティ価格の改善を挙げた。ザックスのアナリストは、「中国に2社しかない石油の複合企業の1つとして、ペトロチャイナは有利な環境に乗じて業績を伸ばすことが出来るだろう」と述べている。

 アベンハウス氏は、高い輸送費や、同社の精製所が需要の多い中国南東部ではなく北西部に多く位置することなどをリスクと見ている。さらに、シノペックとCNOOC同様、激しい競争、規制強化による利益率低下の可能性、自然災害による石油開発、生産、輸送への影響も考慮する必要がある。

 個別株を好まない投資家には、iシェアーズFTSE新華チャイナ25インデックスファンドなどのETFや投資信託をアベンハウス氏は勧めている。

(ロバート・パウエル氏は、マーケットウォッチ発行の退職者向け投資情報誌「リタイアメント・ウィークリー」の編集者)

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【バロンズ】日本がダントツ1位、米国が2位 - 高い税率は経済に深刻な悪影響
■ 実効税率は法定税率より低い
 2008年の大統領選のさなか、こんな応酬があった。共和党のマケイン候補は、「米国企業は世界で2番目に高い35%もの法人税を払っている」と主張した。民主党のオバマ候補は、「税法には色々な抜け穴があって、実際は世界最低クラスの税金しか納めていない」とやり返した。

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Stuart Goldenberg for Barron's

 両者とも正しく──そして、間違っていた。オバマ氏の言うとおり、確かに実効税率は35%よりずっと低いが、それでも先進国中2位。1位はダントツで日本。米国はフランス、ドイツ、英国をわずかに上回ってその後に続く。多くの人が驚くだろうが、スウェーデンよりも高い。

 税法に抜け穴があるのは米国だけではない。多くの国で、法定最高税率と実効税率の間に大きな差がある。

 グラフは、全米経済研究所のワーキングペーパー「法人税の国際比較」から拝借した。その主な発見事項は、ほぼ全ての国で年々実効税率が下がり続けているが、各国間の順位は驚くほど固定的ということだ。

■ 日本33.5%、米国22.5%
 本誌は9カ国と1地域(メキシコとブラジルを中心とする中南米)について、2006年から2009年の4年間の平均実効税率を計算してみた。

 先に述べたとおり、日本がダントツの33.5%だが、以前のピーク46.8%よりは低下している。法定最高税率は40%で、実効税率よりかなり高い。しかし、他国と比べてみれば、両者の差はそれほど大きくない。

 2位は22.5%の米国で、法定最高税率の39%より大幅に低い。そのすぐ後に、フランス(21.5%)、英国(20%)、ドイツ、中南米、オーストラリア(3国いずれも19.8%)が続いている。

 低い方に目を向けると、カナダ(16.8%)、台湾(16%)、スウェーデン(13.5%)などがある。スウェーデンは、社会主義的イメージから企業に厳しいという評判をとっている。だが、ヘリテージ財団発表の経済的自由度指数によれば世界22位で、米国と共に「最も自由」なグループに入っている。

■ 多国籍企業の税金は高い
 法人税は激論を引き起こしやすい問題だ。22.5%より高い所得税を払っている米国人は少なくない。法人税は安すぎるだろうか。だが、税率が22.5%より低い個人納税者が全体の80%を占める、という事実が慰めになるのではないか。しかも、その80%は、顧客や社員、株主という形で法人税の一部を負担している。

 高い法人税率は経済成長と国際競争力の妨げになるだろうか。アメリカ経済学会が昨年発表した研究報告「投資および起業家精神に対する法人税の影響」によれば、高率の法人税は「深刻な悪影響」を与える。いずれにせよ、米国がさらに少し法人税率を引き下げたところで、他国に比べそう低くなるわけではない。また、長年にわたり経済が低迷している日本は、この点について考えてみるべきではないか。

 一般的な見方と違って、多国籍企業は国内専業企業よりも実効税率が高い。大きな例外は日本とフランスで、多国籍企業の方が1〜2%ポイント税率が低い。これに対して、米国は多国籍企業の方が約5%ポイント高い。スウェーデンに至っては8%ポイントも上回る。多国籍企業は、例えば本社を低税率の国に置くなど、柔軟に実効税率を下げようとしている。それでも、複数の国による課税と戦わなければならないのだ。

 教訓。税金に関するかぎり、どこに逃げても逃れるすべはない。

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米国はナンバー2!
主要先進国で米国の法人税の実効税率は第2位。スウェーデンは最低。日本がダントツのトップ。


記者: Gene Epstein